1972年には小説「G.」でブッカー賞を受賞。また代表作『Ways of Seeing』(邦題『イメージ:視覚とメディア』)は、西洋美術の商業主義や女性の描かれ方を通して、西洋社会のものの見方のバイアスを批評し、今もなお世界中で版を重ねる象徴的な作品となりました。韓国では近年、著書の多くが翻訳されているほか、日本でも西欧の移民労働者を描いた『A Seventh Man』(邦題『第七の男』)を始め、2024年以降邦訳が立て続けに出版されています。
クリスマスの1週間前、 私はカンシーまで ジョンを訪ねることにしたーー
2007年に映画『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、今年1月には最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が日本公開された英国の女優ティルダ・スウィントンにとって、ジョン・バージャーは特別な存在であり続けてきました。1989年の映画『Play Me Something』(日本未公開)で共演を果たしたふたり。軍人の父を持ち、時を隔てて同じ日にロンドンで生まれたという事実が互いの結びつきを強め、長年にわたって親交を深めてきました。
人間がどう動物を観ているか、あるいは観ていないか。ジョン・バージャーは、その著作において、繰り返し、人間社会におかれた動物の実存について言及してきました。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られます。本編の撮影前、バージャーは、最愛の妻ベバリーを病で亡くしました。監督のクリストファー・ロスは、「人間と動物」そして「死」に対する自身の考察を展開し、ときをほぼ同じくして自らも経験した母、祖母との相次ぐ死別への応答を試みます。
人間がどう動物を観ているか、あるいは観ていないか。ジョン・バージャーは、その著作において、繰り返し、人間社会におかれた動物の実存について言及してきました。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られます。本編の撮影前、バージャーは、最愛の妻ベバリーを病で亡くしました。監督のクリストファー・ロスは、「人間と動物」そして「死」に対する自身の考察を展開し、ときをほぼ同じくして自らも経験した母、祖母との相次ぐ死別への応答を試みます。
ティルダ・スウィントンがスコットランドからふたりの子どもを連れ、パリ郊外に滞在するバージャーを訪ねます。その後、子どもたちはバージャーの息子、イヴが暮らし、絵を描き、農業を営むカンシーを訪れ、季節に住まい、“いま”を生きることを体験的に学んでいきます。親から子へと主題が移る本編は、バージャーとスウィントンが互いの父について話した ” 聞き方(”Ways of Listening) ” への応答でもあります。作曲家サイモン・フィッシャー・ターナーのレコーディングと、パリからカンシーへの旅路で記録された音に彩られ、次世代の視点からカンシーのジョンの家が描かれています。
出演
Cast
ジョン・バージャー
John Berger
1926年ロンドン生まれ。小説家・批評家・画家・詩人。1972年、英国BBCで企画/脚本/プロデュースのすべてを担当したTV番組4部作『Ways of seeing』で広く存在を知られる。同名書籍は美術批評界の金字塔とされ、欧州市民の多くがアートや文化理論を理解する契機を得たとされる。同年、小説『G.』でブッカー賞を受賞。70年代からフランスの農村に拠点を移し表現活動を続け、2017年に90歳で逝去。