ジョン・バージャーと4つの季節The Seasons In Quincy: Four Portraits of John Berger ジョン・バージャーと4つの季節 5/24[土]より渋谷イメージフォーラムほか 2016年ベルリン国際映画祭正式出品 2015 | イギリス | カラー | 英語 | 90分 | 16:9 | 5.1 サウンド 原題: The Seasons in Quincy: Four Portraits of John Berger 配給: BABELO  宣伝協力: Rhino 後援:ブリティッシュ・カウンシル 製作: デレク・ジャーマン・ラボ、ピッツバーグ大学、バルテク・ヅィアドーシュ、サイモン・フィッシャー・ターナー、リリー・フロイド、コリン・マッケイブ、クリストファー・ロス、ウォルター・スタッブ、ティルダ・スウィントン、アダム・バルトス、ヴィジェイ・ヴェイドヤンナン

“独創的な映像のコレクション作品”

アンドリュー・パルバー

英・ガーディアン紙

“映画祭のうち一番感動的だった”

オレスティス・アンドレアダキス

ギリシャ・シネマガジン誌

“ひとりの人間に迫る肖像画のような”

ジェフェリー・マクナブ

英・インデペンデント紙

“美しくも非凡なアプローチ。
「創造」についての考察である”

ライアン・ステッドマン

英・オブザーバー紙

イントロダクション

Introduction

稀代のストーリーテラーとの
“思考のレッスン”

英国の作家ジョン・バージャーは、1950年代末にデビューし、2017年に90歳でこの世を去るまで、美術批評、詩作、戯曲、小説といった多彩な分野で旺盛な表現活動を展開しました。

1972年には小説「G.」でブッカー賞を受賞。また代表作『Ways of Seeing』(邦題『イメージ:視覚とメディア』)は、西洋美術の商業主義や女性の描かれ方を通して、西洋社会のものの見方のバイアスを批評し、今もなお世界中で版を重ねる象徴的な作品となりました。韓国では近年、著書の多くが翻訳されているほか、日本でも西欧の移民労働者を描いた『A Seventh Man』(邦題『第七の男』)を始め、2024年以降邦訳が立て続けに出版されています。

クリスマスの1週間前、
私はカンシーまで
ジョンを訪ねることにしたーー

2007年に映画『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、今年1月には最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が日本公開された英国の女優ティルダ・スウィントンにとって、ジョン・バージャーは特別な存在であり続けてきました。1989年の映画『Play Me Something』(日本未公開)で共演を果たしたふたり。軍人の父を持ち、時を隔てて同じ日にロンドンで生まれたという事実が互いの結びつきを強め、長年にわたって親交を深めてきました。

スウィントンが中心となり、ロンドンの実験的映像プロダクション、「デレク・ジャーマン・ラボ」と製作した本作は、彼女がバージャーの住むフレンチ・アルプスの村カンシーを訪ねる場面から始まります。カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して、戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった、バージャーが一貫して取り組んできたテーマを一つ一つすくい取り、次世代にバトンを繋いでいきます。

“小さな声”、“声なき声” に耳をすませ、生涯を通じて “文化的抵抗”(Cultural Resistance)を止めなかった語り手、ジョン・バージャー。その鋭くも温かい世界へのまなざしが、スウィントンを始め、彼を慕う人々との対話を通じて立体的に浮かび上がります。それはまた、混沌とする現代社会にあって、バージャーが今に遺した置き手紙のようにも見えてきます。

あらすじ

Stories

聞き方

Ways of Listening

舞台は雪で閉ざされた冬のカンシー。ティルダ・スウィントンは、久しく顔を合わせていなかったジョン・バージャーのもとを訪ねることを決めます。時代を隔てながらも、同じ日にロンドンで生まれたふたり。スウィントンが「同じ駅で降りたような」と口にするように、互いに呼応し、作品の共演などを通じて交友を深めてきました。本編では、ふたりがキッチンで交わす会話を中心に物語が展開されます。バージャーの詩や絵を題材とし、父親の記憶と戦争、歴史、世代を超えた価値観の継承と更新など、率直に語りあいます。

Spring

人間がどう動物を観ているか、あるいは観ていないか。ジョン・バージャーは、その著作において、繰り返し、人間社会におかれた動物の実存について言及してきました。『Why Look at Animals?』や『Into the Labour』に収められた彼の動物についての記述が、アルプスの高原に暮らす動物たちの姿とともに語られます。本編の撮影前、バージャーは、最愛の妻ベバリーを病で亡くしました。監督のクリストファー・ロスは、「人間と動物」そして「死」に対する自身の考察を展開し、ときをほぼ同じくして自らも経験した母、祖母との相次ぐ死別への応答を試みます。

政治の歌

A Song for Politics

映画批評家のコリン・マッケイブが、若きアーティスト3名を連れ、ジョン・バージャーのもとを訪れます。混迷をきわめる現代において、社会をより良い方向に進めるために、わたしたちは何をどう伝える必要があるのか。バージャーが発する言葉をヒントに、映画監督のクリストファー・ロス、作家のベン・ラーナー、移民文学者のアクシ・シンが政治におけるアートの役割について討論を繰り広げます。

収穫

Harvest

ティルダ・スウィントンがスコットランドからふたりの子どもを連れ、パリ郊外に滞在するバージャーを訪ねます。その後、子どもたちはバージャーの息子、イヴが暮らし、絵を描き、農業を営むカンシーを訪れ、季節に住まい、“いま”を生きることを体験的に学んでいきます。親から子へと主題が移る本編は、バージャーとスウィントンが互いの父について話した ” 聞き方(”Ways of Listening) ” への応答でもあります。作曲家サイモン・フィッシャー・ターナーのレコーディングと、パリからカンシーへの旅路で記録された音に彩られ、次世代の視点からカンシーのジョンの家が描かれています。

聞き方

Ways of Listening

Spring

政治の歌

A Song for Politics

収穫

Harvest

聞き方 / Ways of Listening

舞台は雪で閉ざされた冬のカンシー。ティルダ・スウィントンは、久しく顔を合わせていなかったジョン・バージャーのもとを訪ねることを決めます。時代を隔てながらも、同じ日にロンドンで生まれたふたり。スウィントンが「同じ駅で降りたような」と口にするように、互いに呼応し、作品の共演などを通じて交友を深めてきました。本編では、ふたりがキッチンで交わす会話を中心に物語が展開されます。バージャーの詩や絵を題材とし、父親の記憶と戦争、歴史、世代を超えた価値観の継承と更新など、率直に語りあいます。

出演

Cast

The portrait of John Berger

ジョン・バージャー

John Berger

1926年ロンドン生まれ。小説家・批評家・画家・詩人。1972年、英国BBCで企画/脚本/プロデュースのすべてを担当したTV番組4部作『Ways of seeing』で広く存在を知られる。同名書籍は美術批評界の金字塔とされ、欧州市民の多くがアートや文化理論を理解する契機を得たとされる。同年、小説『G.』でブッカー賞を受賞。70年代からフランスの農村に拠点を移し表現活動を続け、2017年に90歳で逝去。

The portrait of Tilda Swinton

ティルダ・スウィントン

Tilda Swinton

1960年ロンドン生まれ。誕生日はバージャー同様の11月5日。女優。1986年デレク・ジャーマン監督の『カラヴァッジオ』で映画デビュー。以来、7本のジャーマン作品に出演し、一躍実力派女優としての立場を確立。2000年『ザ・ビーチ』以降ハリウッド進出を果たし、2007年『フィクサー』でアカデミー助演女優賞受賞。アート系映画からハリウッド大作まで幅広いジャンルでその存在感を示す。最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(ペドロ・アルモドバル監督)は2025年1月31日劇場公開。

製作

Filmmakers

The portrait of The Derek Jerman Lab

デレク・ジャーマン・ラボ

The Derek Jerman Lab

ロンドン大学バークベック校所属の映画制作および視覚芸術を専門とする研究室。「映画を通じて思考する」ことをミッションとし、映画監督・アーティストのデレク・ジャーマンの精神を受け継ぎ、カメラを知的探求の手段とした「実践と研究の融合」を基調に活動している。本作は同ラボ初の劇場公開作品。デジタル技術進化によりコンテンツ制作が容易になった現代、同ラボでは映画制作の枠組みを再構築し、特にエッセイフィルムの形式を通じて学生たちが深く思考する機会を提供している。

The portrait of Colin MacCabe

コリン・マッケイブ

Colin MacCabe

イギリスの英文学者・映画研究・製作者。1976年に『ジェイムズ・ジョイスと言語革命』(筑摩書房,1991)でケンブリッジ大学博士号取得。1985年から米ピッツバーグ大学で英文学と映画を講じ、現在同大学特別教授およびロンドン大学バークベック・カレッジ教授。製作総指揮作品にデレク・ジャーマン『カラヴァッジオ』(1986)、邦訳著書に『ゴダール伝』(みすず書房,2007)。

The portrait of Christopher Roth

クリストファー・ロス

Christopher Roth

ドイツのアーティスト・映画監督・プロデューサー。ミュンヘンテレビ・映画大学を卒業後、2002年に監督した “Baader”(日本未公開)はベルリン映画際にてアルフレッド・バウアー賞を受賞。ベルリンやケルンを中心に活動するエスター・シッパーギャラリーを代表しヴェネチア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレに出展。

予告編

Trailer

著作紹介

Literary Works By John Berger

第7の男の書影

第七の男

黒鳥社, 2024年
著=ジョン・バージャー、写真=ジャン・モア、訳=金聖源、若林恵

家を失うことは、名前を失うことである─
移民労働者の実存に迫り、新自由主義の悪夢を暴いた、
伝説の”パンフレット” 。
英国の孤高のストーリーテラーが
50年前に残し、イスタンブールのスラムで、
ギリシアの港で、ダマスカスの路上で
密かに読み継がれ、グローバルサウスの
労働者を奮い立たせてきた名著。
移民問題に揺れる現代社会を穿つ、
待望の初邦訳!

詳しくはこちら

その他著作

  • 『果報者ササル ある田舎医者の物語』(みすず書房, 2016年)著=ジョン・バージャー、写真・著=ジャン・モア、訳=村松潔
  • 『批評の「風景」 ジョン・バージャー選集』(草思社, 2024年)著=ジョン・バージャー、編=トム・オヴァ―トン、訳=山田美明
  • 『画家たちの「肖像」 ジョン・バージャーの美術史 古代―近代』(草思社, 2024年)著=ジョン・バージャー、編=トム・オヴァートン、訳=藤村奈緒美
  • 『画家たちの「肖像」 ジョン・バージャーの美術史 近代―現代』(草思社, 2024年)著=ジョン・バージャー、編=トム・オヴァートン、訳=藤村奈緒美
  • 『イメージ 視覚とメディア』(ちくま学芸文庫, 2013年)著=ジョン バージャー、訳=伊藤俊治
  • 『見るということ』(ちくま学芸文庫, 2005年)著=ジョン・バージャー (著)、監修=飯沢耕太郎、訳=笠原美智子